1. HOME > 
  2. 特集記事一覧 > 
  3. AV制作メーカーインタビュー FILE.1:マリオンAV

AV制作会社の秘話やコンセプトを徹底インタビュー。
業界の矛盾や苦悩を今後どのようなヴィジョンで開拓していくのかなど徹底討論。

AV制作メーカーインタビュー FILE.1:マリオンAV

2012年の幕開けとともに新レーベル「マリオンAV」が立ち上がった。全世界のコンテンツビジネスを焼き尽くした『インターネット』という至上最大のウイルスが猛威を振るう中、彼らはどのようなヴィジョンを掲げ新メーカーを立ち上げたのか。胸中に秘めた熱い想いとは。マリオン座談会の様子を克明にレポート。

──豊田薫が〈オペラ〉とは別の、新しいメーカー設立のために動いているらしい、という話を聞いたのは今年の8月初旬。猛暑真っ直中の頃だった。 今回、このページの写真を撮った元『ビデオメイトDX』編集長・松沢雅彦が、その旨のメールを受け取ったと教えてくれた。 確かに、本誌4月号「山松対談」に登場した時、HMJM制作『全身ハードコア・エミリ(百花エミリ)』は、自身でカンパニー松尾に企画を売り込んだと語っていたこともあり、 豊田が今やニューハーフ専門メーカーのようになってしまった〈オペラ〉だけでは、もう飽き足らなくなっているというのは傍目から見ても感じられた。  また、先月の「山松対談」には二村ヒトシが登場。誌面の関係で原稿には詳しく書けなかったのだが、09年から始まった同監督による話題のレーベル〈美少年出版社〉は、 大阪で活動するプロデューサーニシダヒロシ氏と、工藤澪監督率いる『実録出版』との共同出資で始まったということ。さらに、その流通形態はミニマムかつユニークで、 これまた大阪で唯一無比のナンパビデオを制作しているパンチ監督のセルフ・レーベル〈ぱんちか〉も、ニシダ氏の手によるものである、という話を聞いた。  そして今回、豊田薫が構想していた新メーカーとは、そのニシダプロデューサーが中心となり、二村ヒトシも参加。 さらに先頃『実録出版』を退社した宮本小次郎と、みならい、両監督も加わり、新メーカー『マリオン』としてスタートすることになった。  ということでその全貌をお聞きするべく、ニシダ、豊田、二村、小次郎、みならいの五氏にお集まり頂いた。 また、小次郎、みならいのお二人は二村監督〈美少年出版社〉の技術・撮影スタッフを務めているとのこと。 ちなみに、みならい監督が何故「みならい」というユニークなお名前なのかは、本文中ご本人が語っておられます(笑)。

Label:Marrion-AV(マリオンAV)
Writer:東良美季   

王道AVメーカー【マリオン】の誕生秘話

今は時代が変わって、ホームページさえ作れば「メーカー」と名乗っていいという感じになりましたから。僕なんかはやり易かったんですね。

──まずは本誌初登場ということで、ニシダさんがどういう経歴の方なのか、ということからお聞かせ願えますか。

マリオンレーベルを立ち上げたメインプロデューサーのニシダ氏。

ニシダ
僕は元々セルビデオショップの人間なんです。〈LUDUS1〉という、大阪で3店舗展開していたお店にいました。 で、独立してアダルトDVDの通販サイトを始めることになりまして、その時看板を譲ってもらうという感じで、サイトの名を『LUDUS1.COM』としたんです。

──『LUDUS1.COM』さんは、「日本国内で正規流通しているアダルトDVDならほとんど扱っております」と謳い、 尚かつ〈美少年出版社〉〈実録出版〉〈ハマジム〉〈シネマユニット・ガス〉といったマニアックなメーカーを「ルーダス店長のお勧めメーカー」として紹介されてますね。

二村
お店の方の〈LUDUS1〉は今でもあるんだっけ?

ニシダ
いや、もうないです。今年になって全店閉めてしまったので、今は僕の『LUDUS1.COM』の名前だけが残ったという形ですね。

──それが何故、出資・制作を手がけられるようになったのですか?

ニシダ
ええ。元々はただのショップと通販サイトですから、もちろん自社コンテンツはなく、他社さんの作品を売ってただけなんですけど、今〈ヘリポビデオ〉というメーカーをやってるまこちん監督という人がおりまして、 彼は元々ウチのお客さんだったんですね。で、ある日「M男ビデオが作りたいんや」と言ってきまして。僕もそういう試みはとても面白いとは思ったんですが、何せ制作に関しては素人ですし、 大阪にはそういうスタッフもいない。どうしよう? と思ってた時に、協力してくれたのが『実録出版』さんやったんです。

──ああ、なるほど。その流れで〈美少年出版社〉の技術スタッフも、小次郎さんとみならいさんがやられてるわけですね。

ニシダ
そうなんです。その始まりが〈ヘリポビデオ〉で、当時は僕が出資と全体のプロデュースを担当して、監督だけ東京・横浜へ行ってもらって、実録さんの協力で撮影するというスタイルでした。

──ショップさんが制作をやるというのは、東京、大阪問わず珍しいんじゃないですか?

二村
実録の工藤さんは確か、元々京都の安売王系ショップで働いてたんじゃないかな。〈オーロラプロジェクト〉の葵刀樹さんも、レンタルショップのオーナーだったと思う。 だからセル黎明期は、そういうオーナーさんとか店員さんとかが、自分の店で売るためにハメ撮りを始めたというのはあったと思うんですよ。ベイビーのKoolong監督もそう。彼もハメ撮りをしてた。その頃から電マは作ってたんらしいけど(笑)

ニシダ
ハメ撮り以前に、ブルセラ的なものはたくさんあったように思います。そもそもSODさんがまだ問屋ではなく、北都(現・CA)さんくらいしか流通業者がいなかった頃には、 二次使用とかロクな商品がなかったんです。やがてアタッカーズさんとかジェイドさんとか、メーカーと言われる会社が出て来たわけですが、そこまでお金のない所は、ショップオリジナルという形でブルセラっぽいのを制作してた。 でも今は時代が変わって、ホームページさえ作れば「メーカー」と名乗っていいという感じになりましたから。僕なんかはやり易かったんですね。

──撮影機材も安くなったし、編集もパソコン一台あれば出来ますもんね?

ニシダ
ええ、それもありますが、僕らにとってはもっと顕著な変化があって、それは月にたった1本リリースでも、あるいは不定期にしか発売しなくても、メーカーとして成り立ってしまうことです。 〈ぱんちか〉なんかはまさにそうで、月1本しか出してない。

AV監督業の他、『モテるための哲学』など多くの著書を持つ二村ヒトシ氏。

二村
流通形態もバラバラなんだよね?

ニシダ
今、ウチが直接やってるのは〈ぱんちか〉の220店舗だけなんです。他は商品に合った流通を選択するというか。ですから大手TIS(CA系の問屋・流通)さんを使ってる商品もあります。

豊田
大手の流通だと、自主規制モザイクは扱ってくれない。俺の場合、アナルに修正かけたくないから、〈オペラ〉ではそれがフラストレーションというのもあった。

ニシダ
大手流通にはデリケートな部分があるんです。〈ぱんちか〉なんかも当初、SOD流通から「ウチでもお願い出来ませんか?」と打診はあったんですが、パンチさんは街頭ナンパの際、人の顔以外にモザイクはかけない。 店の看板とかそのまま出したい人なので、それは大手では絶対に通りませんから。

二村
修正の問題以外にも、やはり作品、レーベルに合わせた流通をするというのが大切で、さっきニシダさんが言ったように「月何本必ず出しましょう」じゃなく始めたから、〈美少年出版社〉は何とかカタチになったんですよ。だって女装して可愛い男の子なんて、毎月2人も3人もいるわけないから(笑)。見つかったら撮る、というのが当初のやり方だった。だからあれはもう僕の趣味というか、「絶対にやりたい!」というのがまずあって、でもTOHJIROからは「そんなの誰が観るの?」って言われた。それが、僕が〈ドグマ〉を辞めたひとつの要因だった。だからニシダさんに「儲からないかもしれないけど、そういうコがいたらやろうよ」と持ちかけた。それで小次郎とみならいに手伝ってもらって作ったら結果が出た、というのが〈美少年出版社〉の成り立ちなんです。

5つの才能が集結するとき

3月に東日本大震災があって。もちろん俺なんて何の被害も被らなかったけど、ああやってすべてを失った人達を見るとね、俺が何を失うことを恐れてるんだ? と。

──で、いよいよ今回の新メーカー『マリオン』なんですが。

ニシダ
今ウチが『LUDUS1.COM』とは別に、〈マリオン〉というウェブマガジンをやってまして、その中では各メーカーのサンプル動画なんかが観られるということもあって、おかげさまで1日に10万アクセスくらいあるんです。だったらもうこの際だからすべてまとめて、『マリオン』というグループ・メーカーを作ってしまおうと。

──じゃあ、それには〈美少年出版社〉や〈ぱんちか〉も入るわけですか?

ニシダ
ええ。整理すると、豊田さんの新レーベル〈EVE〉、二村さんは〈美少年出版社〉とは別に〈欲望解放〉。小次郎は〈IRIS(アイリス)〉、これは逆から読むとSIRI(尻)になります(笑)。みならいは〈youthful video〉。他にパンチとシルビア滝口による〈粘膜接触〉というのもあります。これはいわゆる接吻物で、パンチさんが男×女2人、シルビア監督は女同士のレズキス。これらを全部統括して、『マリオン』というメーカーサイトを作ることにしたんです。

AV界の重鎮、豊田薫氏。彼の手掛けた作品が後世に与えた影響は多岐に及ぶ。

──なるほど。ところで豊田さんがこの『マリオン』に参加しようと思ったのは?

豊田
まあ〈オペラ〉を始めて丸6年になるわけだけど、いつの間にかニューハーフ専門メーカーみたいな形になっていった。もちろんニューハーフ撮るのは相変わらず面白いんだけど、それだけというのはあまりに選択肢が狭すぎる。元々〈オペラ〉は「美少女からスカトロまで」というコンセプトで始めたわけだからね。

──それも先ほど話に出た流通の問題ですよね。CAという巨大グループメーカーだと、単体は〈エスワン〉〈MOODYZ〉、熟女は〈マドンナ〉と細分化されてるから、〈オペラ〉はニューハーフに特化するしかない。

豊田
そうなんだ。で、新しい可能性を探していた時にニシダさんと出会った。俺の場合、古くは芳友舎、ダイヤモンド映像、リア王、オペラと来たわけだけれど、それは必ず誰かとの出会いによって始まってるわけ。で、ニシダさんと色々相談していて、「ウン、この人は面白い」「一緒に仕事がしたい」と思った。それが一番大きいね。だから彼を信用出来ると思ったから、この〈EVE〉は全額、俺が出資するレーベルなんだよ。

──確かにそれは今までと違いますね。豊田さんの場合、常に制作だけに徹したいからと、今までは経営に一切タッチしなかった。

ニシダ
その辺も面白くて、豊田さんは全額出資、二村さんは僕と折半、そして小次郎、みならいはウチの社員監督という形になる。

──なるほど。普通のメーカーだと「資金は用意しますよ」と言ってくれる代わりに、「じゃあ毎月××本必ずリリースしてください」とかになってしまう?

豊田
つまり業界全体がそういう閉塞状況なんだよ。そこを打ち破るには、自分で出資するというリスクも負わなければと考えた。それとね、去年くらいからニシダさんと色々打合せをしてたんだけど、3月に東日本大震災があって、あれが大きかった。もちろん俺なんて何の被害も被らなかったんだけど、でもああやってすべてを失った人達を見るとね、俺が何を失うことを恐れてるんだ? と。

小次郎
それ、判ります。僕も決して実録が嫌で辞めたわけじゃないんですね。でも震災の映像とかを観ていて、俺だっていつ死ぬか判らないじゃないか。だったら思い切って飛び出してみようと。

ニシダ
そういう意味では本当に偶然が重なったんです。元々、二村さんとは〈美少年〉とは違うものをやろうと話し合ってた。 で、豊田さんとはまた別に話を進めていた所に、小次郎とみならいが独立すると言うから、じゃあすべてまとめて『マリオン』にしてしまおうかと。

豊田薫・二村ヒトシ。巨匠両名のコンセプト

──豊田さんは〈EVE〉で、どういう作品を撮っていくおつもりなんですか?

豊田
まずは『真フェラチ王』というのを撮りました。かつてリア王時代に『フェラチ王』というシリーズを撮っていたんだけど、今思うと中途半端だなという気がしてる。だから今回は絡み一切ナシ。全編フェラとゴックンだけにこだわってます。後は俺のもうひとつのテーマであるアナルも徹底的に行こうと。これは撮影はまだなんだけど、初アナルの娘の出演が決まってます。

ニシダ
僕のリクエストでもあるんですよ。僕は何と言ってもリア王世代なので。セル店勤務時代たくさん観たし儲けさせてももらった。で、以前から豊田監督がニューハーフとスカトロの人というイメージになってるのが嫌だったんです。 もっと色んなテーマがやれる、すごい作家だと思ってますから。

──二村さんは〈エスワン〉や〈MOODYZ〉と言った、いわゆるメジャーメーカーでも撮っているわけですが、そこに何かフラストレーションのようなものはあったんですか?

二村
んー、僕の場合、ノー天気に「スケベな女の子が取れればイイ」って思ってるから不満というのはあまり無いんだけど(笑)。ただ、やはり外注、下請けという立場でやっている限り、やはりエロくない娘も撮らなきゃならないケースも出て来る。そこで今回の〈欲望解放〉みたいな場があると、とても楽しいかなと。

──二村さん自身の欲望を解放するわけだ(笑)。先月から始まった〈マザーズ〉との違いという点ではどうでしょう?

二村
うん、だからそこは逆にポジティヴに攻めたいと思ってるんです。〈マザーズ〉ってまず企画ありきじゃないですか、「淫語」とか「女が男を責める」とか。 そこで出会った女の子で「この娘にはもっと別なエロさがある」と思った時に、〈欲望解放〉で撮るという。だから第1弾はマザーズの『女神降臨 感動SEX神秘の扉 Part1』で撮ったあすかみみ。 そして第2弾では〈MOODYZ〉の『面接即採用。即デビュー!VOL.3 美しすぎる現役看護師。好奇心で応募してきたスケベな素人娘』に出た、コレ、すごく売れたらしいんですけど、柏木ゆりを撮りました。

宮本小次郎・みならい。新世代監督の履歴書

──小次郎さんは実録出版の言わばナンバーツーで、尻好きな人には超有名な監督さんですが、本誌には初登場ということで、まずは簡単な経歴から聞かせて頂けますか?

小次郎
僕は実録で監督やらせてもらって6年くらいなんですけど、元々はテレビの音声の会社にいて、スタジオでのMAなんかをやってました。 でもAVが好きで、特に工藤澪の大ファンだったんですね。それである日メールを送ったら、「じゃあ、遊びに来る?」なんて気さくに言ってもらって。 それがきっかけです。工藤には他にも弟子志願はたくさんいたらしいんですけど、たまたま僕は近所に住んでたので(笑)。

──今、お歳は?

小次郎
35才です。

──じゃあ20代の後半から実録に入られたと。そのテレビの会社におられた頃から、AVを撮ってみたかったんですか?

小次郎
そうですね。とにかく制作がしたかったんです。音声やMAというのは、基本ディレクターの指示で動くわけですから、自分が撮りたいように、作りたいように映像を制作出来たらという、そういう憧れはありましたね。 だから僕、当時は小さなカメラを使って、個人的にAVっぽい映像を撮ったりもしてたんです。

二村
へえ。それ、女の子はどうしてたの?

小次郎
知り合いの娘に頼んだり、後は、風俗でオプションとして撮らせてくれるところがあったんですよ。

豊田
ハメ撮りやってたんだ。

小次郎
まあ、ハメ撮りもそうですけど。イメージなんかも撮りましたよ。ボディコンとか、そういうフェチ的な衣装を着せて、という。

豊田
仕事としてではなく、自分でお金を出してそういう映像を撮るという情熱はすごいよね。俺なんかは素人時代考えられなかったな。

──やはりそれは世代的なものもあるんじゃないですか。豊田さんや二村さんの時代とは違って、小次郎さん達の世代には小型カメラは普通にあるし、AVも物心付いた頃からある。ところで、小次郎さんは『マリオン』で 撮るものも、やはり「尻」ですか?

小次郎
そうですね。さっき言ったように実録が嫌で辞めたわけではないし、実は工藤からは「これからも手伝えよ」とは言われてるんです。 ただ、震災もあって、一度は外の世界を体験しようと。でも、やはり映像的な快感があるのは「良い尻が撮れた時」なんですよね。やはりソコは追求していくと思います。

──みならいさんも、そのお名前とは裏腹に実録では監督として活躍されてた……とゆーか、何ンで「みならい」さんというお名前なんですか?(笑)。

みならい
僕は新卒で実録出版に入ったんですけど、ADとして現場にいると、色々面白いことが起きるんですよね。日常生活では決して経験出来ないようなことが。女優さんが突然暴れ出してベッドから落ちたり(笑)。それでこれは何処かに書いておきたい、書き残さなければという使命感にも似た衝動にかられまして(笑)。それでブログを開設しようと思ったんですが、入社したばっかりのヤツが「実録出版」を名乗るのはおこがましいから、「みならい」ということにしようかと。

二村
そのブログがねえ、面白かったんだよ。

みならい
二村さんに初めてお会いした時、即「みならい君!」って呼ばれて(笑)、それで定着してしまったという。

──新卒で入られたということは、それまでは大学生だったわけですね。何故、実録出版に入社しようと思われたんですか。

みならい
それはもう、本当に偶然で。大学生の頃からアルバイトで映像制作の仕事に関わってまして、出来ればこのまま地続きの職場に行ければいいかなあと思って探したんです。

──その学生時代やられてたというのは、どういう分野の?

みならい
えーと、NHKの地方局が制作する市町村の紹介ビデオみたいなものです。

豊田
明るい農村みたいなヤツだ。

二村
それを極寒の地でやってたんだよな。

みならい
そうです。●●で。

──ああ、大学がそちらの方で。

みならい
ええ。それで就職活動で東京に出て来た時に色々と映像の会社を、まずはメジャーなところから受けてみたんですけど、何処もシビアで厳しそうなんですね。 まあ、当然なんですけど、●●の田舎から出て来た身としては「恐いな」と。「こんなトコ入ってADなんかやらされたら死んじゃう」と(笑)。それでもう少し中小というか、自由にやらせてもらえる会社ってないかなと探してまして、 その時たまたまなんですが、『エロの敵~今、アダルトメディアに起こりつつあること』(安田理央・雨宮まみ共著 翔泳社)という本を読んでいたんです。 で、その中に「実録出版」が紹介されていて、すごい印象的な名前だから何となく検索してみたらホームページに〈社員募集〉とあった。

──でも、「実録出版」って名前もちょっと恐くないですか?(笑)

みならい
そうなんですけど、工藤も宮本もブログをやっていたので、読んでみたら「まあ、悪い人じゃないだろう」と(一同爆笑)。 それでメールして電話して、面接というか、ご飯をご馳走してもらったりして。ああ、やっぱりイイ人達だったと(笑)。撮影から編集はもちろん、小規模な会社ですから、流通まで携わることが出来る。 その後アダルトじゃない会社も幾つか受けたんですが、結局実録がいちばん居心地が良かったというか。

──AVに抵抗は無かったんですか?

みならい
うーん、無かったですね。

──でも、実録さんだとハメ撮りは必須、やらなきゃいけない感じじゃないですか?

みならい
うん、それはやってみたかったんですね。

──ハア、なるほど。その辺はやはり小次郎さんと同様、世代を感じますね。AVの中でハメ撮りというのが決して特殊なイメージではないと。

豊田
ハメ撮りはずっとやってるの?

みならい
やってます。

豊田
あまりパワフルなセックスはしそうにないけどな。

みならい
まったりしてるって言われますね(一同笑)。

──で、みならい監督は『マリオン』ではどういった企画を考えておられるんですか?

みならい
僕は実録で、レーベル的には映天系列の〈NEEDS〉というのをやってました。コレがまあ、僕のレーベルみたいな感じになってたんですけど。女子校生の尻フェチものというスタイルだったんです。

──小次郎さんがエロい女の尻だとしたら、青い果実のお尻というか(笑)。

みならい
ええ。工藤がパケであの特徴的な写真を撮っているので、イメージ的にはモロ「尻フェチ」なんですけど、僕の嗜好は少しずつロリ的なものに向かってまして(笑)。 ですから今回は実録に比べ価格も下がるので、お尻というテイストは守りながら、女子校生の可愛さみたいな部分を追求したいですね。

──小次郎さんも含め、実録出版さんとの差別化みたいなものはどうお考えですか。〈尻フェチ〉ということになると、やはりユーザーを食い合うみたいな部分はあるかと思うんですが。

ニシダ
実録出版さんの場合、やはりあの工藤さんが撮られるパッケージ写真というものの印象が強いと思うんですね。

──いや、本当に強烈だと思います。パケだけで抜けてしまうというような(笑)。

ニシダ
ええ、ですから流通的に考えると、工藤さんの写真を使わないということだけで、お客さまへのアピールは全然違うと僕は考えてます。正直、〈IRIS(アイリス)〉も〈youthful video〉も、 パケを工藤さんにやって頂い た方が売上げは伸びるとは思うんですね。でもそこは敢えて違ったアプローチで挑戦してみたい。小次郎もみならいも長年実録さんで監督していたのが、新しい舞台で再スタートするわけですから。

小次郎
 僕も、実録の頃は「今はどういうものが売れるんだろう?」とか、トレンドや流通のことを考えて企画を立てていたんですが、今回ニシダさんとこうやって組んでやらせてもらうに当たっては、 もうニシダさんを100% 信頼しているので、すべてお任せして僕は自分が作りたいものを作ろうかなと。何て言うんでしょう、「今はこれがトレンドだ」とか「業界の流れこうだよ」みたいなことに、正直興味が無くなってしまったので(笑)。

豊田
それ、俺も大切だと思うね。小次郎くん今35でしょ、そのくらいの歳の監督で、やたらリサーチ力があって、「今はこういう企画が売れますよ」なんて言ってるヤツ、絶対に信用出来ないもん(笑)。 それより、監督ならまず「何が撮りたいか」でしょう。俺なんかも一応、幅広く知り合いの監督やプロデューサーに「今はどういうのが売れてるの?」って聞いて、情報は入れたいとは思ってるけど、 でも、だからと言って売るために自分の撮りたくないものまで作ろうとは思わないから。 小次郎 そうなんです。情報ってのはこの業界に居ればある程度は耳に入って来るものだし、どの時代にも売れセンっていうのはあるとは思うんですね。 でも今回『マリオン』では初心に帰りたいというか、自分でお金出してAV的な映像撮ってた頃の初期衝動に戻りたいんですね。

堕落したAV業界の現状に反旗を翻す

ウチは実績のある監督が時間をかけて作っているんだと。10年20年AVを観てきた眼の肥えたお客さんに満足して頂ける作品作りを目指したい。

──今AVは、作り上がってしまったシステムに沿って作っていくという流れが出来てしまったように思えるんです。流通の形態がガッチリ固まってしまって、メーカーはそれに沿った製品を供給していく。作品ではなくて。だから僕みたいなAVを批評している者からすると、面白味のないモノばかりが量産されていく気がします。

豊田
システムっていうのはどういうこと? つまり売れセンのものばかりが作られるという意味?

──いや、それ以前に今現在AVってとにかく作品数が膨大にあるわけで、メーカーにとっては、ショップにおいてまず棚をどれだけ占拠出来るかという問題がある。そもそもお店に並ばなければ商品は売れないわけですから。となるとまず人気のシリーズを作っておいて、その路線に沿った作品をどんどん量産していく。だから大手メーカーの場合、すべての企画がプロデューサー主導の元、会議室で作られて、現場の監督へ流されていくと。昨年某人気素人シリーズをレギュラーで撮ってる監督にお話を聞く機会があったんですが、彼に言わせると「自分達は牛丼屋の店長なんだ」と言うわけです。企画から女優のキャスティングまでメーカーがやるわけで、肉は本社が仕入れてある程度加工して送られてくる。お店は温めて客に出すだけというのと一緒で、AVの現場も同様のルーティーンワークになってる。

豊田
なるほど。まず売りやすいシステムが確立されて、現場ではそれに沿った作業をしていくと。

──牛丼屋やファミレスが決して悪いという話じゃなくて、そういうシステムによって価格は下がるし店には入りやすくなる。AVでも昨年辺りかなり価格が下がりましたよね。ライトユーザーにはありがたい話かもしれないけれど、「何処かに美味いラーメン屋はないか?」と探してるようなマニアックなユーザーや、コアなAVファンには物足りない作品ばかりになってしまう。まあ、現在の大手AVメーカーが吉野家やガストみたいなクオリティを持っているかは別として、ですが。

豊田
要は発想が逆なんだな。俺なんかはまず監督に確固たる作りたいものがあって、さてそれをどう売るかと考えるべきだと思うんだけど。

ニシダ
〈ぱんちか〉はまさにそういう発想で始めたんです。第1弾、第2弾の頃は扱ってくれる店舗さんは10店くらいしかなかったですから。パンチ監督に「こういうものを作りたい」という気持ちがあって1つの作品が出来た。常識的に考えれば問屋さんにお願いして委託で1,000店舗くらい撒いてもらうということをやるわけですが、それじゃ面白くないと思って、1店舗1店舗説明して廻ったわけです。それが現在やっと220店舗まで来た。

──〈ぱんちか〉のお話、詳しく聞かせて頂けますか? パンチ監督の個性もあって、情報誌で彼の新しいレーベルが始まったというのは知られていた。ただ、誰もが「どうやって売ってるんだろう?」って言ってたんです。「Amazon.co.jpで売ってるらしいよ」「それで売上げあるの?」みたいな(笑)。

ニシダ
〈ぱんちか〉は今もそうなんですが、5枚買取というカタチで店舗さんにお願いしたんです。そうでないとまず第1弾、DVDが1枚棚に刺さってても目立たないし、そもそもそれ以前にお店側が扱ってくれない。取り敢えず5枚取ってもらえれば何とかなると。

──5枚買取って珍しいですよね。

ニシダ
いや、自分で言うのも何やけど、常識外れのムチャクチャな話ですよ(笑)。今は買取でやってるメーカー自体がほぼ皆無、オール委託ですから。

──それを1店舗1店舗お願いして開拓していったわけですか。すごいな。

ニシダ
ですから最初は商売として全然成り立たなかったです。何しろ第1弾から第2弾の間半年くらい時間が空いてるんです。ただ、パンチさんも当時はディープスから外注作品を受けていたこともあって、彼の生活は何とかなると。その間に僕とウチの営業マン1人とで置いてくださるお店を開拓していったんですね。

二村
だから、〈ぱんちか〉でひとつそういう可能性が見えたよね。ひと月に何本出すというリリース計画無しにレーベルが始められる。〈美少年出版社〉も最初は3ヶ月に1本くらいだった。

──その「常識外れのムチャクチャな話」が進んだ、現在220店舗まで開拓出来た秘訣というのは何なんですか?

ニシダ
ひとつ運が良かったのは、セル店の店長さんクラスに、SOD世代というか、パンチさんのファンが多かったんです。SOD時代の「マジックミラー号」から観てたような人達ですね。彼らに「パンチが頑張ってるんだから応援してやろう」というありがたい気持ちがあった。それと、ウチの営業マンというのが元々ディープスのプロデューサーで、パンチの担当でもあったんです。なので商品説明が詳しく、情熱持って出来たということでしょうか。(注・「マジックミラー号」はSODにて高橋がなりが考案、サダージ深野、マメゾウらによって監督されたが、後にディープスへ移り、パンチが二代目監督として引き継いだ)

──なるほど。そうやってまさに1店舗ずつ増やしていったと。

ニシダ
それと、セル店の中でヤル気のあるお店というか、新しい流れが出来つつあるような気がします。結局今は全部委託商品ですから、メーカーや問屋からDVDが送られて来て、店はそれをただ並べるだけ。もう本当にオートメーション化されてるわけです。でもそんなのは面白くないと思い始めた店舗さんが出て来た。例えばココ数年ずっと「棚を監督名で括るなんてもう古い」と言われて、だからメーカー側もパッケージに監督クレジットをしないという流れになってましたけど、でも今は「誰が作っているかということをもう一度見直そう」と言い出してる店が、ちょっとずつ増え始めています。

二村
メーカーを越えたカンパニー松尾の棚を作ってるお店とかあるよね。

ニシダ
そうなんです。なのでお店の中にも「これじゃアカンな」と。ただメーカーから送られて来る商品を、これまた用意してもらったメーカーボードの元に並べるという、それだけじゃダメなんだという気持ちが生まれてる。ですから全国数千店舗のうち、200店舗くらいは差別化というか、「ウチはちょっと変わったことしてみよう」と思うお店があったということだと思うんですね。

──なるほど。さっき豊田さんが閉塞状況とおっしゃってたけど、店舗さんの中にも、同様の意識を持ってる方がいらっしゃるということなんですね。

ニシダ
ですから『マリオン』全体のコンセプトとしては、先ほども世代という話が出ましたが、20代から50代、ベテランの監督から若手まで、まずは年代の違う監督達が自由にものを作るということがあります。そしてもうひとつ大きなテーマとして、現状のアダルトDVDって作品数がものすごく増えていて、店舗にも3ヶ月とか、短い期間しか並ばないんですね。だから大手メーカーだと監督は納期に追われるんです。毎月とにかく3タイトル作らなきゃならないとか。

──いわゆる「芸が荒れる」というか、流される部分がどうしても出てきますよね。

ニシダ
そうなんです。だから玄人向けAVというか、ちゃんとしたものを作っているというのは押したい。ウチは実績のある監督が、時間をかけて作っているんだと。ですからライトユーザーではなく、10年20年AVを観てきた、眼の肥えたお客さんに満足して頂ける作品作りを目指したいですね。

二村
つくづく思うんだけど、僕はSODの始まりの頃からセルに関わっていて、当時高橋がなりさんがしきりに言ってたのは、AV制作者も著作権を持とうということだったじゃないですか。

監督達が自由にモノを作れるメーカー、【マリオン】

──高橋さんはテリー伊藤氏率いるロコモーションというテレビ制作の会社にいて、いくら番組を作っても権利はすべてテレビ局に持っていかれてしまう。だけどAVなら制作者が著作権を持てるはずだと考えてSODを作ったんですよね。

二村
そう。だから当初監督主導のレーベルである〈ON〉がスタートして、TOHJIRO、松本和彦、鷲本ひろしなんかが参加した。がなりさんというのはまさに「オン・デマンド」という考え方で、 ユーザーの意見を取り入れる、いわゆる「少年ジャンプ方式」で作品をプロデュースした人だったけど、同時に監督にも著作権印税を支払うということをやった。そもそもセルビデオの原点というのはそれだったわけです。

豊田
うん。俺なんかも芳友舎(現h.m.p)時代相当売上げに貢献したつもりだけれど、作品の権利は一切俺の手元には残ってないからね。

二村
そうなんですよ、がなりさんはそういうレンタルAVの在り方にアンチテーゼして、理想を実現してたんだよね。でも、いつの間にかセルAVの業界が巨大化するに従い、 さっき言われたようにシステム化し、監督の権利というのがどんどん奪われていった。これってどういうことなんだろうって、僕はずっと考えてたんですよ。で、ニシダさんと知り合った時 、ニシダさんがしきりに「監督が食えない今の現状っておかしいですよね」と言ってた。僕は〈ドグマ〉辞めてフリーになってから、幸い〈エスワン〉とか〈MOODYZ〉からお仕事頂いて生活出来て来たけれど、 でもしょせんは下請けなわけで、いつ切られてもおかしくない。だから〈美少年出版社〉にはそういう意味もあったんです。僕が好きなことをやってゴハンを食べていけるレーベルをやりたいという。

──ニシダさん、その「監督が食えない状況はおかしい」ということに関して聞かせてもらえますか?

ニシダ
単純に、この業界って監督に限らず、実際にAVを作ってる人って実は少ないんですね。モノを作ってる人の周りにたくさんの人間がいて、つまり言い方は悪いけど、モノを作れない連中が作ってる人の稼ぎでメシを食ってるわけです。で、僕は作れない側の人間なので、まずはモノを作れる人が裕福でないと困るんです。僕自身がメシ食おうと思ったら、まず監督が稼いでくれないとどうしようもない。ところが今は一番偉い、最も大切にされなきゃいけない監督が、すごい安いギャラで下請けして、食うや食わず苦労してる。これはやっぱり、おかしな状況だなって思いますね。

──不思議ですね。大げさな言い方すると、それってこの国の普遍的な歪みという気がします。会社でも製造とか営業とかより、総務が一番エラそうな顔してたり、テレビ局でも編成が一番偉いとか。国家全体で言えば市民より役人が一番優遇されてる。額に汗して働いてる人が最も冷遇されてるんですよね。

豊田
うん、判る。そのせいか、俺はココ数年実感が薄いというかね、地に足がついてないような感覚をずっと持ってた。今自分はいったいどの道を走ってるんだろうか? という。二村が言ったみたいに業界が大きくなり過ぎたせいか、自分がAVを作って、売って、それで稼いでるっていうリアルな感覚が希薄になっているんだな。だからこそ〈EVE〉に関しては自分で出資しようと思った。そうすれば、俺は俺の作品を作って売って、金を稼いでるんだという実感が持てるんじゃないかと。

──そうすれば当然著作権も作った人の元に残る。二村さんがさっき言った、セルAVの原点に立ち帰れるわけですね。

豊田
うん。それでね、まさに「立ち帰る」ということに関して言うと、ちょっと気取った話になっちゃうと恥ずかしいんだけどさ、今年に入って魯迅の『故郷』って小説を読み直したんだよ。久しぶりに再読したらこれが良くてね(笑)。主人公が約20年ぶりに帰郷するという物語なんだけど、帰ってみるとそこは見る影もなく荒れ果てているわけ。で、最後に彼がこう言うんだな。「希望とは、本来あるとも言えないし無いとも言えない。これはちょうど地上の道のようなもの。実は地上に本来道は無いが、歩く人がいると道は出来るのだ」と。つまり何が言いたいのかというと、こういう状況の中でも希望は見つけなけりゃいけないんだけど、要は歩き続けていかなければだめなんだと。そうすれば希望はいつか見つかるのかなと。去年東北の大震災があって、今回こうして『マリオン』に関わるに当たって、すごく俺の気持ちにフィットしたんだよね。

二村
希望っていうのは僕もすごく感じますね。かつてセルAVっていうものには希望があったわけだよね。それがどんどん摩耗してしまった。けれどそれをまた取り戻すのも、やはり豊田さんが言うように歩き続けなきゃ見つからないんだという。

豊田
だから『マリオン』がAVにとっての希望と言うとおこがましいかもしれないけど(笑)、ひとつの突破口になってくれればいいなと思うね。

ニシダ
監督さんというのはゼロからモノを作れる人だから、そういう人達が食えない状況というのは絶対におかしいと思うんですよ。さっき20代から50代、各世代の監督達が自由にモノを作れるメーカーと言いましたけど、今後、みならいが今20代ですが、もっと若い人でAV撮りたいという人がどんどん現れると思うんですね。『マリオン』にもどんどん参加して欲しい。若いうちは「好きなことやれるんやからお金は別に」って言うかもしれないけど、やがてそれでは立ちゆかなくなる。僕も30才を過ぎてからはつくづく判るんです。だからAVで食えるんや、頑張れば儲かるんだという希望は、やはりあった方がいいですよね。

(2011年11月7日、於・コアマガジン) ※『ビデオ・ザ・ワールド』(コアマガジン刊)2012年1月号掲載、「個性的な監督作品が集結する新メーカー『マリオン』座談会」に大幅に加筆致しました。

マリオングループ総合Web通販ルーダス ニューリリース情報 02/23